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大丸 先義後利を貫く

 本日、J・フロントリテイリング資料館の菊池満雄さんから「大丸 先義後利を貫く」という著書をいただきました。菊池さんは私が「高島屋東別館」のビデオを制作するとき、松坂屋大阪店として建てられたことから資料を見せていただいたのがはじまりで、完成後には住まいのミュージアムで行った上映会イベントで百貨店の歴史について語っていただいたり、大変お世話になった方です。もう10年以上も前のことになりますが、当時は松坂屋の業務統括室におられ、何を聞いても即答される生き字引のような方だったので、菊池さんの頭の中のたとえ一部であってもこうして活字にして残されて良かったと思います。

 

百貨店の統廃合が進み、現在は J・フロントリテイリング資料館に所属されている菊池さんに一度会いに行ったことがあります。名古屋のプランセス会で吉田寮ビデオ上映の機会があった2019年2月のことです。矢場とんのみそかつをご馳走になりながら、一泊するのだけれどどこを見学したら良いかと相談したところ、名古屋城本丸御殿と揚輝荘を勧めてくださいました。名古屋滞在中その二ヶ所に加え、名古屋市市政資料館と昭和塾堂、トヨタ産業技術記念館を巡ったのですが、豊臣秀吉のつくった大阪で育った私にとって、名古屋は東京に近いものを感じ、またポテンシャルの高さにも圧倒されるものがありました。

 

さて、著書の話題に戻りまして、本のタイトル「大丸 先義後利を貫く」ですが、「先義後利」とは中国の儒学の祖の一人、荀子の栄辱編の中にある「義を先にして利を後にする者は栄える」という意味だそうです。先義後利」を検索するだけで、先義後利 大丸」と出てきて、先義後利」が大丸グループ共通の精神、営業方針の根本だということを今回はじめて知りました。

 

実は菊池さんからは昨年(2021年)の5月にも、「松坂屋 ひと・こと・もの語り」という本を贈っていただきました。NHK連続テレビ小説「カーネーション」のロケ地として高島屋東別館(かつての松坂屋大阪店)エレベーターホールが使われていたことは当時話題になり、建築マニアの間では広く知られていますが、松坂屋に関連する話題として、そのほかに、ヒロインの小篠綾子さんが松坂屋の社員から洋裁を教わったことや娘のコシノヒロコさんが松坂屋ドレスメーカー女学院で学ばれてことも紹介されていました。飯田蝶子が松坂屋上野店で働いていた話。古くは、土方歳三が「いとう呉服店」で丁稚をしていた話など、身近な話題として描かれている本なので、とても読みやすく、仕事の合間にあっという間に読み終えることができました。

 

難波や心斎橋の百貨店に年に数回親に連れて行ってもらうことが唯一の娯楽だった我々世代には、百貨店はテーマパークのような存在。そこにはおもてなしの心があったのですね。10年以上も前のご縁を大切にし、ご著書を出版されるたびに贈ってくださる菊池さんは、お客様を大切にされる方なのだな〜、菊池さんもまた先義後利を貫いてこられたのだな〜と感じたのでした。