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酒井一光さんが見つめた大阪の建築たち「発掘 the OSAKA」書籍化 リターンツアーに参加

 2020年8月28日、酒井一光さんが見つめた大阪の建築たち「発掘 the OSAKA」書籍化というクラウドファンディングのリターンツアーに参加させていただきました。

 

酒井一光さんは、大阪歴史博物館の建築専門の人気学芸員だったのですが、在職中の2018年に志半ばで亡くなったことから、その死を悼む先生方が中心となり生前に酒井先生が遺した文章をまとめて出版しようというプロジェクトが立ち上がりました。そして、その費用の一部をクラウドファンディングで集めたことから、私たちもそのリターンツアーに参加出来ることになったのです。

 

私たちが申し込んだのは、建築史家で大阪市立大学教授の倉方俊輔先生と一緒に巡る建築ツアー。酒井先生が生前に案内してくださった建物を中心に大阪のど真ん中、日本橋の三つの建築を巡りました。

 

最初に訪れたのは、「日本橋の家」。間口2.9m奥行き15mのうなぎの寝床のような敷地に建つコンクリート打ち放しの建物です。オーナーの金森さんも同行してくださり、安藤忠雄さんに直談判して設計してもらったお話を伺いました。かつてはご家族4人で暮らしていたということで、昔は町家だったスペースが設計によりこんなに豊かな空間に生まれ変わる事が出来るんだー、と驚きをもって見学させていただきました。現在はキャラリーとして使われています。

 

高島屋東別館はリノベーションにより建物の半分が「シタディーンなんば大阪」というホテルに生まれ変わっていました。そのリノベーションはかつて百貨店だった天井の高さやアーチ窓という贅沢な空間を活かし、ヨーロッパのホテルを思わせる雰囲気になっていました。それでいて決して敷居が高い訳ではなく、遊び心があふれるデザインを随所に施すことでカジュアルさを演出した長期滞在も可能なホテルで、友たち数人とてっちりパーテイをしに泊まってみたくなりました。

 

シタディーンなんば大阪のミーティングルームでは、関西の歴史建築シリーズの第二作目「高島屋東別館」を上映しました。私がはじめて上映会を開いた時に上映したのがこの「高島屋東別館」で、そのシンポジウムにご登壇いただいたのでが酒井先生という思い出の作品です。そういう意味でツアー参加者が時空を超えて同じ作品を鑑賞したことは、酒井先生の良いお供養になったと思います。

 

最後に訪れた「心光寺」は、先代の住職がタージマハール参考にして建てたお寺です。現在は本堂をヨガスクールや演劇の舞台としても活用されていて、倉方先生の解説によると建築が開かれた仏教の舞台となっているというのは、本来の仏教のあり方そのものを表現しているとも言えるということでした。

 

三者三様の建築を巡ったツアーは、どこもまた訪れてみようと思うような、建築を身近に感じることのできるツアーになりました。

楽しみが激減している中、参加されたみなさんからは、「豊かなツアー」「中味の濃いツアー」「予想していた以上に素晴らしツアー」だったというお言葉を頂戴しました。

 

最後に、たくさんある大阪の建築の中からなぜこの建築たちが選ばれたかというと、コロナで緊急事態宣言下にあった時期、倉方先生が「#建築はうちで」というハッシュタグでtwitterやFacebookに写真をアップされたことがきっかけです。

 

その1番目に挙げられのが「シタディーンなんば大阪」で、 それを見た参加メンバーがリターツアーの見学先として希望されて見学することに決まりました。

 

もし、倉方先生が「#建築はうちで」の1番目に「シタディーンなんば大阪」を挙げられていなかったら、もしメンバーが見逃していたら、もし私が高島屋東別館の映像を作っていなかったら・・・この日のツアーは全く違った内容になっていました。

 

それが最終的に、酒井先生にご登壇いただいた思い出の上映会に繋がったこと。そして、酒井先生の奥様の酒井安純さんにもツアー参加してほしいなーと心の中で念じていたら、なんと安純さんが当日何の前触れもなく参加されたこと。念ずれば花ひらくとはまさにこのことか。私にとってまさに「キセキのツアー」となったのでした。

 

「シタディーンなんば大阪」が入っている高島屋東別館

シタディーンなんば大阪のアーチ窓の部屋

日本橋の家/安藤忠雄

タージマハールのような心光寺