東京大学に朝日会館の研究をされているグループがあります。その名も朝日会館・会館芸術研究会。
東京大学大学院総合文化研究科へルマン・ゴチェフスキ准教授を中心に2012年春に結成されたこの研究会では、朝日会館と『会館芸術』に関わる資料収集と情報交換を行い、この春、東京大学駒場キャンパスの駒場博物館でその成果をお披露目されるということです。
朝日会館(1926年~1962年)は、現在朝日新聞の社屋が建っている場所に大正時代に建てられた黒いビルです。大阪に音楽や演劇を楽しむ場所が中央公会堂しかなかったことから、もっと市民が芸術に親しめる施設をつくりたいということで、朝日新聞社が建てた建物です。
朝日会館からは、朝比奈隆率いる関西交響楽団(現・大阪フィルハーモニー交響楽団)が誕生するなど、次々と先進的な芸術活動が発信され、文化の殿堂として市民に親しまれました。その流れは現在のフェスティバルホールへと引き継がれています。
東京の大学で大阪の朝日会館の研究をされるとは不思議といえば不思議ですが、東京だからこそ、大阪の民間のメセナ活動の先駆的なこの事例に希少性を感じ、研究対象にされたのかもしれません。
大阪のメセナ活動を語るときに、よく松下幸之助さんが大阪市に寄贈した梅田の歩道橋(1964年)の話が紹介されますが、朝日会館(1926年~1962年)の方が企業のメセナ活動としてはずっと早い訳です。研究する価値があるのでしょう。
朝日ビルのビデオ内で朝日会館を紹介していることを神戸映画資料館の安井さんから聞きましたという東京大学の学生さんが、昨年末わざわざ我が家にお見えになり、東京大学駒場博物館で行われる朝日会館特別展の会場で映像を上映してほしいというオファーいただきました。東京大学と言えば父の母校。父親っ子の私はなんだか父とつながりを持てるような気がして喜んでお受けしました。映像では朝日会館のことを少ししか触れていないのに、そういうことをちゃんと記憶していてくれて紹介してくださった安井さんに感謝です。
催事名 會館の時代 − 中之島に華開いたモダニズムとその後 −
日 時 2015年3月7日(土)~4月5日(日)
会 場 東京大学駒場博物館
主 催 朝日会館・会館芸術研究会
http://fusehime.c.u-tokyo.ac.jp/gottschewski/kaikan/symposion.html
○シンポジウム(於:東京大学駒場キャンパス18号館ホール)
2015年3月14日(土) 14:00
基調シンポジウム:「會舘」という文化装置 ~『會舘藝術』と大阪朝日会館
パネリスト:岡野宏(東京大学博士課程)前島志保(東京大学准教授)
高山花子(東京大学博士課程)ヘルマン・ゴチェフスキ(東京大学准教授)
山本美紀(奈良学園大学准教授)
コメンテーター:渡辺裕(東京大学教授)
18:30 レコード・コンサート
進行:毛利眞人(音楽評論家)
蓄音機提供:株式会社シェルマン
2015年3月15日(日)13:00
参考上映会:「映画アーベント」~朝日会館における映画興行
司会進行:紙屋牧子(早稲田大学演劇博物館招聘研究員)白井史人(東京大学博士課程)
15:30 各論シンポジウム:「會舘」文化の諸相 ~映画・演劇・音楽・文学
パネリスト:紙屋牧子、茂木謙之介(東京大学博士課程)大森雅子(東京大学講師)
長木誠司(東京大学教授)中村仁(桜美林大学講師)山上揚平(東京藝術大学講師)
コメンテーター:朴祥美(横浜国立大学准教授)
主催:朝日会館・会館芸術研究会
共催:比較文学比較文化研究室、表象文化論研究室
○展覧会(於:東京大学駒場キャンパス駒場博物館)
会期:2015年3月7日(土)~4月5日(日)
主催:朝日会館・会館芸術研究会
【展覧会関連企画】
○トークイベント:都市と会館~昭和初期「近代大阪」における大阪朝日会館
出演:橋爪紳也(大阪府立大学特別教授)岡野宏、中村仁(司会)
日時:2015年3月9日(月)18時~20時
会場:東京大学駒場キャンパス学際交流ホール(アドミニストレーション棟3階)
○映画上映+研究発表+講演会:「會舘」文化と宣伝映画『朝日は輝く』(1929)
・映画上映『朝日は輝く』(監督:溝口健二/伊奈精一、サイレント、25分)上映
・研究発表:白井史人「朝日会館・『會舘芸術』における映画と音楽」
・講演:木下千花(首都大学東京准教授)「映画『朝日は輝く』と溝口健二のモダニズム」
司会:紙屋牧子
日時:2015年3月21日(土・祝)14時~17時
会場:東京大学駒場キャンパス学際交流ホール(アドミニストレーション棟3階)
○宣伝映画『朝日は輝く』上映+ギャラリートーク
日時:2015年4月3日(金)14時~
会場:東京大学駒場キャンパス駒場博物館1階セミナー室
ギャラリートークは14時45分(予定)から、駒場博物館にて行います。
展示会場となった東京大学駒場博物館
展示会場